ビスホスホネート製剤を使用している患者に抜歯などの外科処置を行うと、顎骨壊死を引き起こす事が最近問題になっている事を、昨年11月に紹介しました。

今年の1月に日本口腔外科学会より「ビスホスホネート系薬剤と顎骨壊死」という小冊子が出ました。ガイドラインではなく、医療関係者に理解を深めてもらう為の資料といった位置づけの小冊子でしょうか。
ただこれを読んでみると・・・例えば2005年のオーストラリアでの統計データなどでは、抜歯治療による顎骨壊死の発現率が0.37~0.8%で、抜歯を行なわなかった患者さんの顎骨壊死の発現率が0.05~0.1%となっており、この数値をどう読むべきなのか・・・確かに両者の数値には明らかな有意差があるのですが、どちらにしてもかなり低い発現率なのでは?と私は思うのです。

1%を割り込む発現率の顎骨壊死を予防する為に、抜歯が必要な場合でも歯科医は抜歯を控えるべきなのでしょうか?

それともその抜歯治療の為に、ビスホスホネート製剤の使用を治療の前後に控えてもらうのがいいのでしょうか?もし控えてもらうなら、それは治療の何日前から控えれば顎骨壊死を確実に予防できるでしょうか?

この小冊子には顎骨壊死を引き起こす発生機序についても報告がありますが、冒頭の「まだ明らかになっていませんが・・・」の記述のとおり、骨代謝回転抑制作用や血管新生抑制作用などの説も、あくまで仮説の域を出ません。

1%を割り込む発現率、ビスホスホネート系薬剤の骨祖しょう症や悪性腫瘍などへの素晴らしい有用性(今や骨粗しょう症の患者さんの大部分の方に処方されています)、仮説の域を出ない作用機序などを考慮すると、「抜歯をする、しない」「ビスホスホネート系薬剤の内服を止める、止めない」といった極端なガイドラインはこの問題には不適切ではないかと思います。

これはあくまで私の推測なのですが、抜歯したあとの創傷が閉鎖されているかどうかが問題のような気がします。
通常であれば自然に治癒する抜歯の創傷ですが、ビスホスホネート系薬剤を使用している患者さんに対しては、例えば減張切開を行ってでも強引にフラップを作成して縫合を行うとか、インプラント治療やGTRで用いられている吸収性メンブレンなどを創傷閉鎖に使う、などのテクニカルな工夫で発現率を減少させる事ができるような気がします。このあたりのもう少し踏み込んだデータが欲しい所です。

この問題はまだまだ解決まで時間がかかりそうです。

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武藏 泰弘
武藏 泰弘
むさし歯科医院 院長