入れ歯というものは歯ぐきの上に乗っているだけなので、どうしても外れやすくなります。
その入れ歯の維持を良くする為に昔から様々な工夫が試みられています。
その中の一つに「磁石で入れ歯を安定させる」という試みがあります。
その装置を磁性アタッチメントといいます。
残存している歯根に磁石を取り付けて、入れ歯の内面にも磁石をはめ込み磁力で安定させるのです。装置がコンパクトでしかも優れた維持力を発揮するため、次世代の入れ歯の維持装置として注目されていました。装置もどんどん改良されてきたのですが、ある医療機器の普及と共にその磁力が問題視されるようになりました。

その医療機器とは「MRI」です。

MRIで頭部を撮影すると、磁性アタッチメントの周囲に直径12センチ程度の画像の乱れ(アーチファクトと言います)ができてしまうのです。
磁性アタッチメントの適応症になる方は多くの場合高齢者(歯が2、3本しか残っていない方が適応症例です)なのですが、その方々は同時に脳血管系の病気になる可能性も高く、MRIによる頭部診断に支障をきたす場合があるのです。
磁性アタッチメントを推進している方は、アーチファクトは限局的(直径3、4センチらしいです?)で頭部診断には支障をきたさないと主張しているのですが、MRIの診断が命に係わる重要な診断なのに対して、磁性アタッチメントは「絶対この方法しかないのか?」と医師や患者さんから聞かれれば、歯科医師は「いや、それ以外の方法もあります。」と答えざるをえません。Oリングやエラアタッチメントといった装置もあるからです。

大変優れた維持装置なのですが、MRIという医療機器が今現在最高の診断情報を提供してくれるので、磁性アタッチメントはMRIに押し出されるような形ではありますが、残念ながら使うべきではないのかなあと思っています。
私は開業当初のみ何人かに施術しましたが、震災後はしておりません。この磁性アタッチメントは、MRIを越える診断機器が出てくれば、また脚光を浴びる方法と思われます。

投稿者プロフィール

武藏 泰弘
武藏 泰弘
むさし歯科医院 院長