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正中埋伏過剰歯

むさし歯科医院では乳歯から永久歯への交換期の経過観察を重視しています。
カリエス(虫歯)コントロールが最大の目的ですが、永久歯が正常な位置へ萌出するかどうかを見守りたいといった意図もあります。
小学生の時期は、比較的簡単な矯正装置で歯並びを正常な位置へ誘導する事がある程度可能ですし、そのような装置を使わなくても、乳歯の抜歯の時期をコントロールしたり、萌出の邪魔になるような軟組織を整形する事により咬合誘導を行う事ができます。

ある患者さんの症例を紹介します。
左上の一番前の歯の話なのですが、乳歯が抜けて半年間永久歯が萌出しませんでした。
そしてやっと生えてきたと思ったら随分外の方へ・・・最初は上唇小帯が原因と思って整形したのですが、いまいち効果が現れないため、もしやと思ってレントゲン撮影をすると・・・

上の2本の前歯の間に、何と鼻の方に向かっている埋伏過剰歯があったのです!

稀ではありますがこのようなケースもあります。
これではいくら待っても、いやそれどころかどんな矯正装置を入れても、この埋伏歯が邪魔をするため2本の前歯の隙間が閉じる事はありません。
この上顎正中埋伏過剰歯は、殆どの場合口蓋側(内側です)に存在するのですが、時々唇側に存在する時もあり、もしそうなら切開線の位置が変わります。通常のレントゲンではその位置の把握が困難な為、今までは大学病院などで診断、治療をお願いしていました。ですが今回は歯科専用のCT撮影装置を持っている、近所の「おく歯科医院」の奥先生にお願いしてCT撮影してもらいました。

1_2008_05_11_ct_3d

これがその三次元CT画像です。
上の前歯の間に一本だけ反対方向を向いている過剰歯がくっきり!
場所が口蓋側という事もわかりましたので、自院に帰って切開の位置を特定し、埋伏歯を抜歯しました。おく歯科医院のHPも紹介しておきます。http://www.oku-oralsurgery.jp/
奥先生、お忙しい中ありがとうございました。

一見大変そうな症例ですが、埋伏歯を抜歯したあとは両前歯のスペースが閉じてきました。
抜歯をして一ヶ月ですが、5ミリあった両前歯のスペースが今では2ミリになっています。多分2番目の前歯が萌出すれば、自然に両前歯の隙間は無くなる事が予想されます。
でも、もしこの処置を3年後に行ったとすると、前歯の萌出は終了しているため抜歯をしても隙間は閉鎖しません。閉鎖させる為にはブラケットを装着して歯列矯正治療を行う必要があります。健康保険の適用にならない場合が殆どですので、費用の負担も大きくなり、それが理由で治療ができない場合もあります。
一番前の歯に隙間が空いているのとそうでないのとは、顔貌のイメージが大きく変わります。その子供自身のコンプレックスにつながる場合も少なくありません。

「うちの子供の歯の生え方が少しおかしいのでは?」とお思いのお母さん、稀にですがこんなケースもあるのです。
色々悩む前に、是非行きつけの歯科医院で相談される事をお勧めします。

私も「矯正治療をしなくても、ちょっとの処置や工夫で歯並びが改善する症例がもしうちの患者さんでいるなら、その事を早くお母さんに伝えたい!」その思いを胸に子供の定期検診、フッ素塗布の葉書を出しています。

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