昨日の毎日新聞夕刊のトップ記事「医師不足で救急縮小」
http://mainichi.jp/kansai/news/20080129ddf001040002000c.html

今日の神戸新聞の社会版記事「研修生が違法バイト」
http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/0000818871.shtml

この二つの記事を並べて読んだ私は、ちょっと考え込んでしまいました。

まず研修医の「違法」バイトですが、何かとても悪い事をしたような見出しですが、これは2003年以前なら「合法」のバイトです。2004年に厚生労働省が定めた「新医師臨床研修制度」で、研修生のアルバイトが禁止されるようになったからです。しかしその研修生がしていたアルバイトというのが夜間当直や休日日直・・・いわゆる医師不足が深刻な夜間や休日に、急病人を抱えた救急車が頼み込む搬入先の病院のスタッフとしてアルバイトをしていたわけです。確実にみんなの役に立っていますが違法で処分・・・その新しい制度の方が違法(今現在世の中の役に立たない)では?と私は思ってしまいます。

そして毎日新聞の記事は皆さんもご存知のとおり、この「新医師臨床研修制度」によって研修医は研修先を自由に選べるようになった為、大学病院のお抱え医師が激減し、人手確保の為に関連病院へ派遣した医師を引き上げているのです。

実はこの「新医師臨床研修制度」は研修生の立場に立てば、研修生としての身分保障(一定の収入)と研修先の選択の自由がある素晴らしい制度なのですが、新人医師に対する人事権を失った大学病院や、大学病院からの人材派遣に頼ってきた病院にとっては、そして若い医師のアルバイト(今はその若い医師というのは大部分が「研修医」になりますのでアルバイト禁止!)で人材を確保して成り立ってきた救急病院にとっては、少々弊害のある制度です。

で、実際毎日のように「医師不足」「救急患者受け入れ拒否」の記事が新聞を賑わせてます。

ところがこの制度が招いた混乱に対して「制度に不備があったかも・・」と世間に頭を下げるどころか「バイトは違法だ!」と厳しく処分を検討するという厚生労働省。どう考えても地方の医師不足や救急現場のマンパワー不足を招いたのはこの研修医制度なんですから、その制度の不備を埋めるべく、研修生の夜間当直アルバイトくらいは大目に見てやってもいいんじゃないでしょうか。研修医にアルバイトを禁止する根拠は何なのかなあ・・・お役人さんは副業禁止ですから、研修医も同じでないと駄目なんでしょうか。このアルバイト禁止令は、若いうちに体力気力の続く限り臨床の現場に立ち、色々な経験を自分の糧としたい(そしておこずかいもできればもらいたい)、というやる気のある若い医師に足枷をはめてるような気がします。

この制度は今までの医局人事というものの弊害を除去できたという素晴らしい一面もありますので、厳しい話ではありますがこれからは医者集めのルールが変わったのだと、病院は認識してもらう必要があるのでしょうね。この制度のメリット(医師獲得は自由競争)を生かしてそれぞれの地方の病院が医師確保に色々知恵を絞って頂く必要があるのかなとは思います。
ですが救急病院の夜間当直は若い人材(若いと体力があって夜中でも無理がきくので、昼夜逆転しても少しなら大丈夫)が絶対必要ですよ。たとえ経験不足の研修医であっても、指導医の元で指示を仰ぎ、指導医の手足となって動くだけでも現場では大きな戦力となるはずです。研修生がもし全然現場で助けにならないというのなら(そんな事はないと思いますが)、それこそ厚生労働省の指導の元で行われる6年間の医学部教育に問題があるわけで、そちらを手直しするほうがいいのでは?

今回のブログは私はERの経験がないので(歯科医だから当たり前ですが)現場の状況を肌で知らずに書いています。これをお読み下さっている方の中で今の救急現場や地方の医療現場を知っている方がおられましたら、できましたら反論、修正、補足などして頂けると幸いです。私にとっても勉強になります。

投稿者プロフィール

武藏 泰弘
武藏 泰弘
むさし歯科医院 院長